Past Exhibition

Kiichi Katsumizu「秘すれば花」


Envol アンヴォル
(旭川/北の嵐山)

■ ACCESS
〒070 - 0033
旭川市旭岡2丁目13 - 8 北の嵐山 梅鳳堂

■ DATE
2022/7/15 (Fri) - 2022/8/7 (Sun)

■ TIME
AM11:00 - PM5:00

■ OPEN
Friday, Saturday, Sunday

本展は終了いたしました。
ご来廊いただいた皆さま, 有難うございました。

「秘すれば花」

10年は経つだろうか。
私と勝水善一はある雑誌の仕事で僅かばかりの
繋がりがあったものの出会う機会がなかった。
しかし偶然が偶然を招き,
2017年に釧路の美術館で会うことになる。
私はそれまで勝水の作品を
まったくといってよいほど知らなかった。
そこで初めて彼の作品を見たときの衝撃は,
今でも色褪せることなく鮮明に蘇ってくる。
私は美術館の会場ですれ違いざま勝水に
「本物のモダンですね」と,いった。
彼と初めて交わす言葉だった。
私が考える本物のモダンとはなんだろうか。
たとえば近代都市の空間をつくっているデザインならば,
誰もが知るところでは, 日本で最初の超高層建築といわれた
霞ヶ関ビルがある。
しかし霞ヶ関ビルは日本で初めての超高層建築であったが故に
モダン建築としての美観よりも, 超高層ビルであることに
時代の関心を引いた。
時は過ぎ, ポストモダンという言葉が流行したバルブのさなか,
丸の内から新宿に移転した都庁, その建造された高層ビルは
ポストモダンなデザインとして注目された。
しかし私はそれを表現主義だと一蹴した。

さて勝水は, そのような表現主義に迎合することはしなかった。
したがって時代の罠に嵌ることもなかった。
そして彼は伝統的なものを凌駕しつつ,
木工家と自然農法家を両立して飽くなき自然との調和を希求していくことになる。
もちろん, そこに辿り着くには職人としての道程があった。
バブルに浮かれた東京, ポストモダンに迎合する
同時代の作家たちのなかに彼の居場所はなかった。
彼つまり勝水は思いを馳せ岐阜, 飛騨へと向かう。
そこで偶然にも師と仰ぐべき人と出会うことになる。
そして, そこから大切な思想と, 在来工法の建築を学び
精緻で高度な技術と独自の技法を獲得していくのである。
後に, その建築を基礎とした思想と高度な職人技は,
彼自身のなかにある自然主義とモダニズムとの対立に
折り合をつけていく手段になっていくのであった。

勝水の作品を見ると, 表現のために自然の形態を
残そうとしているのではなく,
自然に対しての葛藤つまり相剋があって, 生命の足跡を
慈しむかのように残しているのが解る。
そのような彼の態度は技巧的なものを作品の表に現すことを嫌う。
この勝水の執拗なまでの態度つまり美意識は
世阿弥の美意識に通底しているのではないだろうか。

写真家 基 敦
Photographer
Atushi Motoi

■ PROFILE
勝水 喜一
Kiichi Katsumizu

Instagram
@kiichi_katsumizu

1959 北海道釧路市生まれ
1983 東京造形大学デザイン科卒業
1989 飛騨地方にて大工として弟子入り
大工職とともに日本建築在来工法のディティールを手がかりとした家具の制作を開始

1993 釧路市阿寒町に麓工房を開設
1996 札幌芸術の森クラフト全国公募展 金賞受賞
2005 釧路新聞郷土芸術賞 受賞
2009 シタカラ農園を立ち上げ自然栽培の野菜づくりに取り組む
2011 京都市立芸術大学漆工研究室にて漆を学ぶ

■ CONTACT
baihodo1943@gmail.com